ハイブリッドセミナー開始のための知って得する運営のコツ

当日編

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誰か!撮影機材と撮影のポイント

誰か!撮影機材と撮影のポイント

セミナーが始まる前、会場にカメラを立てた瞬間に襲ってくるのが「さて、どこをどう撮る?」という不安です。

舞台全体を映すのか、登壇者の顔を追いかけるのか、あるいはスライドを中心に押さえるのか。実は正解はひとつではありません。だからこそ、毎回「誰か詳しい人いないの?」と心の声が出てしまうのです。

映像で何を優先するか

撮影の難しさは、会場と配信で「求められる映像」が違うことにあります。会場参加者は登壇者を肉眼で見ているので「スライドがくっきり」している方が助かる。一方で配信参加者は「表情が分かる映像」がないと集中できない。つまり、一台のカメラで両方を満たすのは無理。最初に「今日は表情を優先するのか、資料を優先するのか」を決めてしまうだけで迷いは半分減ります。

致命的な失敗を防ぐために

撮影で最も避けたいのは「ピントが甘い映像」と「顔が影で見えない映像」です。配信では少しの見づらさが大きな離脱につながります。最低限、オートフォーカスを確認すること、逆光を避けること。これだけでリスクの半分は消えます。

配信で最低限必要な機材

セミナー配信に必須なのは、カメラ・三脚・マイク(ピンマイクまたは会場マイクのライン接続)・配信用PC・キャプチャーデバイス・安定した回線。この6点セットが揃えば最低限の配信は可能です。しかも今はレンタルでも比較的安価に借りられます。高価な専用機材を最初から揃える必要はありません。

三脚の高さとレンズの選び方

「カメラはとりあえず後方に置けばいい」と思いがちですが、三脚の高さひとつで映像の印象は変わります。低すぎれば観客の頭が邪魔になり、高すぎれば舞台が斜めに潰れて見える。目安は登壇者の目線より少し高い位置。さらにレンズはズームしすぎない方が安全です。動きのある講演では「やや引き」の構図が後の編集でも使いやすいからです。

ズバリどんなカメラがよいか

一眼レフやシネマカメラに憧れますが、まずはHDMI出力のあるハンディカムでも実用に耐えられます。長時間の連続録画に強く、操作もシンプル。ハンディカムでもズーム多用は禁物。後の編集でも使いやすい画が残ります。

窓を背景にしたときの注意点

窓を背に登壇者を撮ると逆光で顔が真っ暗になります。カーテンを閉めるか、カメラ位置を横にずらすのが鉄則です。どうしても光が入る場合は、顔に簡易ライトを当ててバランスを取ります。

音と映像の連携

撮影と言いつつ、忘れてはならないのが音です。映像が多少暗くても人は我慢できますが、音がこもった瞬間に配信視聴者は離脱します。マイク入力を直接カメラに入れるか、配信卓で音を拾うか。どちらにするかを事前に決めて、カメラ担当と音響担当が一度リハーサルで確認しておくと安心です。

スタッフの配置と動き

カメラは固定で置いても、完全に「置きっぱなし」では危険です。ズームやピントが崩れたときに直せる人を必ず近くに配置する。特に質疑応答の場面では、質問者にカメラを向けるかどうかを誰が判断するのか、決めておかないと迷っているうちに質問が終わってしまいます。

外部に頼むときの注意

外部カメラマンを呼ぶ場合も、必ず「セミナーならではの映像」を理解しているかを確認してください。映画や舞台を撮り慣れた人でも、セミナーでスライドを無視してしまうことがあります。逆にスライドばかり押さえて、登壇者が「声だけの人」になることも。依頼前に「顔とスライド、両方をどう押さえるか」を打ち合わせしておくと、後悔が減ります。

編集をラクにする撮影の工夫

オンデマンド配信用に編集するとき、画が乱れていると作業が倍かかります。登壇者が動く範囲をあらかじめ決め、その枠から外れないようにしてもらうだけで編集が楽になります。さらに、質疑応答の質問者を固定マイク位置に集めると、カメラを切り替えなくても編集しやすい映像が残ります。

タイトルやプロフィールを入れる場合

配信画面に登壇者名や所属を表示したいときは、撮影時に画面下部にスペースを残すことが大切です。顔が画面の端まで大きく映っていると、後からテロップを重ねると見切れてしまいます。構図を「少し余白あり」にするのが、後工程を救う工夫です。

撮影は「美しい映像を撮ること」よりも「伝わる映像を残すこと」が目的です。完璧を目指すより、最低限の優先順位を決めて、残りはパターンで対応する。これで現場はぐっとラクになります。予想外の動きは必ずありますが、それも含めてセミナーのライブ感。私たちは一緒に、その“ちょっとした揺らぎ”も大切にしながら乗り切っていきましょう。